2018年6月20日水曜日

今後の意匠制度の在り方についての検討


昨今、デザインの在り方が多様化しており、我が国での意匠制度の保護対象はやや制
限的ではないかとの意見が出てきています。

その背景には、
・データやAIなどを活用したビジネスが社会に浸透しつつあることや、
・製品自体やUIのデザインのみならず、プラットフォームやデータを含めたデザイン
により、競争力の高いビジネスモデルが確立してきていること、
などが挙げられます。

弊所でも、近年、画像デザインの保護拡大に伴い、UIの意匠を多数出願しておりま
す。
このように、我が国ではUIなどのデザインの重要性が非常に高まって来ており、
これに加え、VR(仮想現実)AR(拡張現実)の技術分野におけるデザインなどに対す
る保護の要求も増えてきています。

これに対して、現在の意匠制度では、物品とはかけ離れたものは登録することはでき
ず、
例えば、ネオンサイン、ライトで壁や地面などに投影される画像のデザインなどは意
匠権の保護対象とすることができません。

また、意匠の出願においても、(見本、雛形等で出願することもできますが、)基本
的には図面で出すことが要求されており、
例えば、VRにおける景色のデザインなどは、現在の出願形式では表現することが不可
能です。

そのため、意匠権の保護対象の拡大は重要なテーマであると言えます。
もし、VR(仮想現実)AR(拡張現実)の技術分野におけるデザインを保護対象とする
のであれば、意匠の定義そのものの見直しや、意匠の出願様式の拡張も必要になって
くるのではないかと思います。

しかし、闇雲に保護対象を拡大してしまうと権利侵害となる範囲も拡大されることと
なるため、例えば、物品性の要件を外してしまったらそれこそどこまで侵害になるの
か不明瞭になってくる可能性があります。
そうなると、他社の権利侵害となることを恐れるあまりおいそれと新しいデザインの
製品は出せなくなり、産業の発達に寄与することを目的としている意匠制度本来の目
的からも逸れてしまう気もします。

要するにバランスの問題だと思いますが、やはり、ここは慎重に検討する必要があり
そうです。
いずれにせよ、意匠件の保護対象については、非常に大きなテーマであることには変
わりありません。

参考:経済産業省 産業競争力とデザインを考える研究会(第11回)-配布資料